

こんにちは。法律事務所Zの弁護士の坂下雄思です。
今回のテーマは「契約書のチェック方法」についてのお話です。
別記事で契約書の重要性について説明しておりますが、本記事ではどのような視点で契約書をチェックすればよいかをお話しします。なお、「契約書チェック」は、「契約書審査」や「契約書レビュー」といわれることもありますが、いずれも同じ作業を指すとご理解ください。
例えば、次のような事例を考えてみましょう。
ある日、あなたは、営業の人から「製造委託契約書」のチェックを依頼されました。
あなたは、どのような視点から、また、何を営業の人に確認しながら、契約書をチェックすればよいでしょうか?
目次
契約書チェックの視点
契約書チェックでは、①どのような取引のための契約書なのか、②誰が何をする契約書なのか、③相手に何をさせたいか・自分は何をしたくないか、という観点から考えてみましょう。
どのような取引のための契約書なのか?
契約書には様々な類型があります。売買契約書、金銭消費貸借契約書、賃貸借契約書、リース契約書、業務委託契約書、サービス利用契約書、ライセンス契約書などなど、多種多様です。
このような契約書の類型は、具体的にどのような取引を行いたいかによって定まることになります。例えば、物を売り買いするなら売買契約書ですし、部屋を貸し借りしたいなら賃貸借契約書です。少し複雑な場合を想定すると、別の会社と共同して研究をしたいということであれば共同研究開発契約書、ソフトウェアの開発をお願いするということになればソフトウェア開発契約書ということになるでしょう。
そのため、「今回の取引はどのような取引なのか」を具体的に考えて、どの類型の契約書が近いのかを考えるのが、検討の第一歩です。逆に、契約書の名称からどのような取引が行われるかを推測することもできます。
上記の事例だとどうなる?
今回は、「製造委託契約書」ということなので、物の製造を委託する内容の契約ということになりそうですね。
▼契約書はなぜ重要なのか?重要性と効力、機能について弁護士が解説▼
誰が何をする契約書なのか?
次に、その取引では誰が何をするのかを考えてみましょう。
例えば、「製造委託契約書」について、あなたの会社が製造を依頼する側なのか製造を受託する側なのかによって、やることは全然違いますよね。あなたの会社が製造を依頼する側であればお金を払って物を受け取ることになりますし、あなたの会社が製造を受託する側であれば物を渡してお金を受け取るということになります。
ある意味当たり前のようにも思えますが、どのような契約条項があなたの会社にとって有利なのか不利なのかは、180度変わることにもなりかねませんので、とても重要なポイントです。例えば、「委託者は、納入される製品の代金を前払いしなければならない」という内容の契約条項が入っていたとしましょう。受託者にとっては、前払いをしてもらえるので債権回収のリスクを回避することができますが、委託者にとっては、前払いをすることで相手の倒産リスクを抱え込むことになります(商品の納入がないまま相手が倒産すると、お金を支払ったのに商品を納入してもらえないリスクがありますので、委託者からすれば後払いのほうが有利です。)。このように、ある条項は一方に有利であれば他方に不利になることが通常ですので、あなたの会社がどちら側であるのかというのは確定させたうえで契約書をチェックする必要があります。
上記の事例だとどうなる?
あなたが営業の人に質問したところ、あなたの会社が製造を受託する側とのことでした。あなたの会社では自社の商品に使う部品の製造を他社に依頼することもあるので、しっかりと確認しておいてよかったですね。
もう一歩踏み込んで考えてみると
例えば、上記の例(あなたの会社が他社に製品の製造を依頼する例)で、あなたの会社が原料を納入して、その原料を取引先が用いて商品を製造してあなたの会社に納入するという取引を考えてみましょう。原料に着目すれば、納入者はあなたの会社ですが、出来上がった商品に着目すれば、納入者は取引先になりますよね。このように、一つの契約でも物の納入者が全く入れ替わった取引が複数含まれていることもあるので、取引全体を分解・整理して考えることがとても重要です。
取引を行う上で、相手方に何をさせたいか、また、自分は何をしたくないか?
これまでの検討で、取引の内容はかなり具体的にイメージできるようになったはずです。
そこで、次は、その取引を行うにあたって、相手方に何をさせたいか、また、自分は何をしたくないか、を考えてみましょう。
例えば、「製造委託契約書」について、今回納入する製品は、どのような規格を満たしている必要があるでしょうか?その製品は、発注を受けてからどのくらいで納入する必要があるでしょうか?納入してもらった商品の検品はいつまでに行ってほしいでしょうか?検品で見つけられなかった不具合があったら、どれくらいの期間、補修の対応をしてもよいでしょうか?納入場所はどこでしょうか?代金はいつまでに支払ってもらえるのでしょうか?万が一、その製品が誰かの特許権を侵害していたらどうしましょうか?
あなたが契約書をチェックするときは、このような観点から、想像力を働かせながら、それぞれの契約条項がどのような意味を持っているか、また、どのような契約条項が不足しているかを、個別具体的に考えて質問する必要があります。また、その検討の上で必要な情報があれば、営業の人に質問して情報収集を行う必要があります。
なお、様々な書籍に契約のひな形が記載されていることもありますので、各種ひな形を踏まえて、それぞれの条項の意味やどのような契約条項が足りないかを考えることも非常に有益です。
上記の事例だとどうなる?
「製造委託契約書」を見たところ、受託者は、検品で見つけられなかった不具合は2年間補修の対応をすることになっていました。営業に確認したところ、対応できても最長で1年くらい、できれば半年にしてほしいといわれました。的確に営業の意向を確認できてよかったですね。
以上のような検討を経て、具体的に契約書に修正・加筆を加えていくということになります。
弁護士に契約書のチェックを依頼することのメリット
契約書の内容確認のポイントは以上のとおりですが、このような観点から契約書のレビューをするのには一定のスキルが必要です。
特に、上記③の検討を行い、どのような契約条項を規定するか、また、どのように契約条項を修正することによって貴社に有利な形とするかについては、基本的な法律の規定を理解している必要があることに加えて、どれだけ多くの契約書をチェックしてきたかという経験値がものを言うところでもあります。
また、契約の内容によっては、許認可の有無を確認する条項を入れたり、下請法に違反しない内容にしたりする必要があるなど、更に高度な検討を求められるものもあります。
このような検討まで自社の従業員で対応しようとすると、人件費がかさみ、また、従業員の負担にもなってしまうことが想定されます。様々な書籍を購入したり、AIレビューのツールを導入したりする場合には、相応の費用も必要です。
この点、弁護士は法律のスペシャリストですので、適切に契約書のチェックをすることができます。そのため、自社で抱え込むのではなく、弁護士に依頼することで適切なリソースの配分・業務の効率化が可能になるというメリットがあるといえます。
法律事務所Zでは、日常的に企業の契約書レビューを行ってきた弁護士が複数在籍しており、これまでの経験を踏まえて、迅速かつ適切なチェックを行うことが可能です。また、どのポイントを特に重視すべきかという観点からのアドバイスも行っております。
契約書のチェックにお困りであれば、ぜひ一度、法律事務所Zにお問い合わせください。
お問い合わせ
![]() | この記事の執筆者:坂下雄思 アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所後、野村綜合法律事務所への移籍、UCLA LLM修了、ニューヨーク州司法試験合格を経て、法律事務所Zに参画。同時に、自身の地元である金沢オフィスの所長に就任。労働事件では企業側を担当。 |
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