
契約で問題が起きたらどんな損害が発生する?弁護士が類型別に解説!
- 契約書作成・チェック
- 裁判・訴訟
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目次
こんにちは。法律事務所Zの弁護士の坂下雄思です。
今回のテーマは「契約書の重要性」についてのお話です。
「取引をするならきちんと契約書を締結しないと、後で紛争になったときに困りますよ」
「契約書の内容確認はちゃんとしていますか?不利な内容が定められていると取り返しのつかないことになりますよ」
などなど、頭の中ではきっとそのとおりなんだろうなと思ってはいても、その意味を具体的に理解できていない人も多いのではないでしょうか。
しかし、私たち弁護士は、契約書のチェックをしっかりしていなかったがゆえに、大変な目にあった人を目にしています。
このような場合、条件を契約書に書いておけば問題なかったはずです。A社が契約書をそのまま使いまわしてしまったのが問題なのです。
そもそも、「契約書」とは何を指すのでしょうか。
ここでは、「契約書」とは、「契約」が締結されたことを記録として残す文書のことをいうと考えてください。(以下、「契約書」と「契約」が別のものであることをわかりやすくするために、それぞれに「かぎかっこ」をつけて記載します。)
基本的に、「契約」は口頭での合意によっても成立します。しかし、人の記憶は薄れゆくものです。記録として残しておかなければ、どのような契約をしたかについて、のちのち分からなくなってしまいますよね。
特に、会社であれば、担当者が退職してしまったというような場合を考えてみてください。その担当者に聞かなければ契約内容が分からないという状況になると、とても困ってしまいます。 しかし、「契約書」を作成しておけば、人の記憶から薄れてしまっていても、担当者がいなくなっていても、「契約書」を見ることで「契約」の内容を理解することができるはずです(大事なことはメモを残しておくのと同じです。)。
また、裁判所は、「契約」の存在・内容を認定する上で、「契約書」の存在・内容を非常に重要視します。そのため、万が一、ある「契約」について紛争が生じた場合に、「契約書」があれば、「契約」の存在・内容を裁判所に示す際に、大変有益です。
さらに、あなたが担当者として、ある「契約」をしたいと考えているときに、会社の上司にその内容を説明するとしましょう。その「契約」の内容を口頭で説明しても、内容が正確に伝わっているかが分からないことはありませんか?また、上司からしても、本当にそれで「契約」の内容は全てなのだろうかと気になることはないでしょうか?
この場合にも「契約書」があれば、「契約」の内容が明確に理解できますので、社内での意思疎通を行う上でも役に立ちます。
このように、「契約書」には、「契約」の内容を明確に記録として残しておく、また、対外的にも「契約」の内容を示すという役割・機能があります。
逆に言えば、「契約書」を作成しないと、①そもそも契約がなされていたかすら対外的に示すことができず、②契約があるというところまでは理解できてもその内容が分からず、③物理的な証拠を示せないため結果として裁判所に請求を認めてもらえない(あるいは想定よりも不利な請求が認められてしまう)という事態になりかねないということになります。
このような事態を回避するため、「契約書」の作成は必須であるといえます。
取り決めた内容はしっかりと契約に記載しておくことで、「そんな約束はしていない」とは言わせないようにする!
ここでの問題は、X社がY氏との間の業務委託契約をしっかりと作りこんでいなかったことです。一般的な業務委託契約書で大丈夫だろうと安易に考えていると、トラブルにつながることがあります。
契約書は、どのような契約がなされたのかを記録化するためのものですが、契約の内容をしっかり書き込んでおかなければ意味がありません。
上記のX社の例では、X社は、Y氏に対して委託する業務の内容を具体的に記載しておくべきでした。例えば、週に何時間か業務をしてほしいのであれば、そのように契約書に記載しておくべきですし、一定のタイミングで成果物(報告書等)を提出してほしいのであれば、その時期・様式・内容を取り決めておくべきでした。
そうすれば、Y氏はしっかりと業務を遂行した可能性がありますし、仮にY氏が業務を遂行しなかったとしても、Y氏が業務委託契約の義務を履行していないことが明らかになり、弁護士がわざわざ介入することなく解決したと思います。
このように、契約書はしっかりと作りこむことで、相手方が契約を守ることを期待できますし、また、紛争を予防する効果も生んでくれます。
それでは、「契約書」はどのような場合に有効に成立する(効力がある)のでしょうか。
既に説明したとおり、「契約書」は、合意(=「契約」)の内容を書面の形で残すものです。そのため、当事者の合意内容が確認できるものであれば問題ありません。
極論すれば、メモ用紙に合意の内容を手書きして両者でサインしておいても、契約書としては有効と考えられます。ただ、このような形では本当に合意があったのかは疑問が残ります。(何もないよりはましですが、そんなに重要なことをメモ用紙に手書きするだろうか、と思いませんか?)
そのため、契約書を作成する場合は、Wordなどのワープロソフトを利用して合意の内容を条項化します。そして、当事者の合意が本当に行われていることを確認するために、両者(会社であれば代表者)が署名し又は会社印を押すことが一般的です。この署名・押印のところを電子署名で行うことも最近は多くなってきています。
もっとも、例えば、「添付の内容で契約しましょう」というメールに対して「承知いたしました」というメールを返事していれば、その添付ファイルの内容の契約が成立していると考えることも十分可能です。ただ、この場合には、そのような合意が担当者レベルではなく会社として行われているかという点で事後的に紛争になる可能性は残ります。
また、システム開発の契約書でありがちですが、複数の資料が作成されており、どの資料に基づいてどのような契約が成立していたかが不明確になることもあります。このような場合には、契約が成立したか否か、また成立したとしてどのような契約が成立したのかが争われることになりますので、そのような事態にならないように対応する必要があります。
他方で、口頭でも契約は成立しますので、「書面としては取り交わしていないから契約は存在しない」という主張ができないケースも想定されることには注意が必要です。
この辺りは、非常に難しい法的判断になることも多いので、疑義が残らないようにしっかりと契約書を作成して、署名・押印・電子署名などにより両者が合意していることを示す証跡を残しておく必要があります。
上記とは逆方向の問題として、「担当者が勝手に契約書を締結してしまったが、そのような契約書は有効なのか?」という問題もあります。
この問題は事実関係にもよるため一概には言えませんが、会社との関係で有効な契約書となってしまう可能性もありますので、注意が必要です。
以上のように、契約書審査のみならず、契約書締結プロセスの管理も会社としては非常に重要になります。このような場合、顧問弁護士に依頼すれば、プロセスの構築に関与してもらうことを期待できます。
例えば、以下のような場合には契約書(契約)の成立が認められない(無効になる)と考えられます。
双方の意思が合致していないので、契約は成立しておらず、契約書として意味のないものと考えられます。
当該担当者に権限がない場合には、基本的には会社との間の契約書(契約)としては意味のないものと考えられます(が、事実関係によっては有効になる可能性も否定できません。)。
そもそも契約成立が認められず、契約書があっても意味がないものと考えられます。
このように、とりあえず契約書の形を整えていても、適切な合意のプロセスを経ていなければ意味のないものになってしまうので、注意が必要です。
なお、例えば公序良俗違反など、実体法との関係で契約が無効になることもありますが、ここでは割愛します
業務の内容を具体的・詳細に記載しておくことで、双方の認識を明確化し、紛争防止に役立てる!
契約書を作ることの重要性や、内容をチェックすることの重要性はわかりましたでしょうか。
とはいえ、重要性はわかっても、どのようにチェックしたらよいかは分からないこともあると思います(契約書のチェックの視点については、次回の記事もご覧ください。)。
さらに、どのような契約条項を規定するか、また、どのように契約条項を修正することによって会社に有利な形とするかについては、基本的な法律の規定を理解している必要があることに加えて、どれだけ多くの契約書をチェックしてきたかという経験値がものを言うところでもあります。
また、契約の内容によっては、許認可の有無を確認する条項を入れたり、下請法に違反しない内容にしたりする必要があるなど、更に高度な検討を求められるものもあります。
このような検討まで自社の従業員で対応しようとすると、人件費がかさみ、また、従業員の負担にもなってしまうことが想定されます。
この点、弁護士は法律のスペシャリストですので、適切に契約書のチェックをすることができます。そのため、自社で抱え込むのではなく、弁護士に依頼することで適切なリソースの配分・業務の効率化が可能になるというメリットがあるといえます。
法律事務所Zでは、日常的に企業の契約書レビューを行ってきた弁護士が複数在籍しており、これまでの経験を踏まえて、迅速かつ適切なチェックを行うことが可能です。また、どのポイントを特に重視すべきかという観点からのアドバイスも行っております。
契約書のチェックにお困りであれば、ぜひ一度、法律事務所Zにお問い合わせください。
![]() | この記事の執筆者:坂下雄思 アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所後、野村綜合法律事務所への移籍、UCLA LLM修了、ニューヨーク州司法試験合格を経て、法律事務所Zに参画。同時に、自身の地元である金沢オフィスの所長に就任。労働事件では企業側を担当。 |
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