
目次
健康食品に関する広告を取り扱いの方へ
こんにちは。法律事務所Zの弁護士の坂下雄思です。
今回のテーマは「健康食品の広告」についてのお話です。
「健康食品が広告等によって医薬品に該当する可能性があると聞いたが、どのようなポイントに気を付ければよいのか?」
このようなお悩みを抱えている事業者の方も多いのではないでしょうか。
広告は、自社の商品・サービスをアピールする上で非常に効果的であり、特にインターネットでの広告は、全国を対象としてビジネスをする上では必須といっても過言ではありません。
しかし、薬機法との関係で、健康食品に関する広告により健康食品が医薬品に該当すると判断される可能性もあります。
この記事では、広告規制のポイントについて解説していきます。
健康食品の広告により医薬品に該当する?
まず、医薬品とは、薬機法2条1項において、以下のとおり定義されています。
一 日本薬局方に収められている物 二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(中略)でないもの(中略) 三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(中略) |
このうち、健康食品の広告が関係するのは、2号と3号であり、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物」(2号)、「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」(3号)という点がポイントになります。そして、ここでは、①医薬品としての目的を有しているか、又は②通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するかどうかにより判断されることになります。
つまり、健康食品は通常医薬品としての目的を有していないと考えられますが(①不充足)、広告により、通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するかが変わり得ることとなるので、健康食品が医薬品に該当することになってしまう可能性があるのです(②充足の可能性)。
具体的な判定方法は?
それでは、「通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するか」は具体的にはどのように判断されるのでしょうか。
厚労省の通知においては、以下の3つのいずれかに該当する者については、原則として医薬品とみなすものとされています。
① 医薬品的な効能効果を標ぼうするもの ② アンプル形状など専ら医薬品的形状であるもの ③ 用法用量が医薬品的であるもの |
以下、厚労省の通知を踏まえつつ、個別に詳しく見ていきましょう。
効能効果について
その物の容器、包装、添付文書並びにチラシ、パンフレット、刊行物、インターネット等の広告宣伝物あるいは演述によって、次のような効果効能が表示説明されている場合には、医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなされます。
疾病の治療又は予防を目的とする効能効果
(例) 糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に、胃・十二指腸潰瘍の予防、肝障害・腎障害をなおす、ガンがよくなる、眼病の人のために、便秘がなおる等
身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果
※ただし、栄養補給、健康維持等に関する表現はこの限りでない。
(例) 疲労回復、強精(強性)強壮、体力増強、食欲増進、老化防止、勉学能力を高める、回春、若返り、精力をつける、新陳代謝を盛んにする、内分泌機能を盛んにする、解毒機能を高める、心臓の働きを高める、血液を浄化する、病気に対する自然治癒能力が増す、胃腸の消化吸収を増す、健胃整腸、病中・病後に、成長促進等
医薬品的な効能効果の暗示
名称又はキャッチフレーズよりみて暗示するもの
(例) 延命○○、○○の精(不死源)、○○の精(不老源)、薬○○、不老長寿、百寿の精、漢方秘法、皇漢処方、和漢伝方等
含有成分の表示及び説明よりみて暗示するもの
(例) 体質改善、健胃整腸で知られる○○○○を原料とし、これに有用成分を添加、相乗効果をもつ等
製法の説明よりみて暗示するもの
(例) 本邦の深山高原に自生する植物○○○○を主剤に、△△△、×××等の薬草を独特の製造法(製法特許出願)によって調製したものである。等
起源、由来等の説明よりみて暗示するもの
(例) ○○○という古い自然科学書をみると胃を開き、欝(うつ)を散じ、消化を助け、虫を殺し、痰なども無くなるとある。こうした経験が昔から伝えられたが故に食膳に必ず備えられたものである。等
新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することにより暗示するもの
(例) 医学博士○○○○の談「昔から赤飯に○○○をかけて食べると癌にかからぬといわれている。………癌細胞の脂質代謝異常ひいては糖質、蛋白代謝異常と○○○が結びつきはしないかと考えられる。」等
また、名称、含有成分、製法、起源等の記載説明においてこれと同様な効能効果を標ぼうし又は暗示するものも同様とされます。医薬品的な効能効果を標ぼうするものに該当する例として、通知では以下が挙げられています。
①名称又はキャッチフレーズよりみて暗示するもの
②含有成分の表示及び説明よりみて暗示するもの
③製法の説明よりみて暗示するもの
④起源、由来等の説明よりみて暗示するもの
⑤新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することにより暗示するもの
高麗人参と同等又はそれ以上の薬効を有する旨の表現により暗示するもの
(例)高麗人参にも勝るという薬効が認められています。
「健康チェック」等として、身体の具合、症状等をチェックさせ、それぞれの症状等に応じて摂取を勧めることにより暗示するもの
「〇〇〇の方に」等の表現により暗示するもの
「〇〇〇の方にお勧めします。」等の摂取を勧める対象を示す表現は、次に示すように対象者の表現如何によっては医薬品的な効能効果に該当する。
- 疾病を有する者、疾病の予防を期待する者、好ましくない身体状態にある者を対象とする旨の表現は、医薬品的な効能効果に該当する。
- 「健康維持」、「美容」を目的とする趣旨の表現は、直ちに医薬品的な効能効果には該当しない。
- 「栄養補給」を目的とする趣旨の表現は、直ちに医薬品的な効能効果には該当しない。
「好転反応」に関する表現により暗示するもの
(例)「摂取すると、一時的に下痢、吹出物などの反応がでるが、体内浄化、体質改善等の効果の現れである初期症状であり、そのまま摂取を続けることが必要である」等として不快症状が出ても、それを「好転反応」、「めんけん(瞑眩)反応」等と称して効果の証であると説明しているもの
「効用」、「効果」、「ききめ」等の表現により暗示するもの
(例)疾病名等の具体的な表現はしないが、特定製品の摂取により、「効果」、「効用」、「ききめ」又は「効能効果」等がある旨を標ぼうすること
「薬」の文字により暗示するもの
(例) ・生薬、妙薬、民間薬、薬草、漢方薬
形状について
現状は、「食品」である旨が明示されている場合、原則として、形状のみによって医薬品に該当するか否かの判断は行わないこととされています。
ただし、アンプル形状など通常の食品としては流通しない形状を用いることなどにより、消費者に医薬品と誤認させることを目的としていると考えられる場合は、医薬品と判断されることになるので、引き続き形状については注意する必要があります。
用法用量について
医薬品は、適応疾病に対し治療又は予防効果を発揮し、かつ、安全性を確保するために、服用時期、服用間隔、服用量等の詳細な用法用量を定めることが必要不可欠であることから、したがって、ある物の使用方法として服用時期、服用間隔、服用量等の記載がある場合には、原則として医薬品的な用法用量とみなすものとされています。具体的には、次のような事例は、医薬品的な用法用量があるものと考えられます。
- 1日2~3回、1回2~3粒
- 1日2個
- 毎食後、添付のサジで2杯づつ
- 成人1日3~6錠
- 食前、食後に1~2個づつ
- お休み前に1~2粒
ただし、調理の目的のために、使用方法、使用量等を定めているものについてはこの限りでないとされています。
このように、医薬品的な効能効果を標ぼうしなくても、その形状や用法用量からも医薬品とみなされる可能性がある点には注意が必要です。
なお、健康増進法43条の規定に基づき許可を受けた表示内容を表示する特定用途食品は、原則として通常人が医薬品としての目的を有する者であると認識しないと判断してよいとされているので、医薬品には通常該当しないことになります。
医薬品に該当するとされた場合は?リスクは?
上記のとおり、健康食品として販売するつもりでも、不適切な広告により薬機法の医薬品の定義との関係で薬機法上「医薬品」とされてしまう結果、その健康食品は未承認医薬品に当たり、販売に許可や届出が必要になり、また、その健康食品の広告に対しては未承認医薬品の広告規制がかかることになります。
未承認医薬品の広告(薬機法68条)を行うと、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます(薬機法85条5号)。
加えて、景品表示法の課徴金の対象とはなり得ると考えられます。
冒頭の事例では、健康食品の広告を行うということなので、医薬品的な効能・効果を標ぼうしていると判断されないような文言にする必要があります。
健康食品の広告対応を弁護士に依頼するメリット
健康食品を販売する上で広告は非常に有益です。
しかし、これまでに説明してきたように、その内容には十分に注意しなければ、罰則の対象となるリスクも潜んでいます。
また、最近は、法的に見れば厳密には問題ないようなケースでも、不親切な広告には批判が集まりがちです。
訴求力に目がいくあまり、規制対応がおろそかになり当局から指摘を受けるようなことは避けなければなりません。
弁護士は、広告規制に違反した場合の事後的な対応についてアドバイスを行うことはもちろんのこと、事前に広告規制に違反しないかについての分析を行うことも可能です。
法律事務所Zでは、企業からのご相談に対応してきた経験を踏まえて、広告規制に違反した場合のサポートはもちろん、事前チェックについてもアドバイスを行うことが可能です。
健康食品の広告対応にお困りであれば、ぜひ一度、法律事務所Zにお問い合わせください。
![]() | この記事の執筆者:坂下雄思 アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所後、野村綜合法律事務所への移籍、UCLA LLM修了、ニューヨーク州司法試験合格を経て、法律事務所Zに参画。同時に、自身の地元である金沢オフィスの所長に就任。労働事件では企業側を担当。 |