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相手の契約書ひな形をそのまま受け入れてよい?リスクや留意点について弁護士が解説!

契約書のひな形

取引時に先方のひな形でそのまま契約してしまっている方へ

こんにちは。法律事務所Zの弁護士の坂下雄思です。

今回のテーマは「相手の契約ひな形」についてのお話です。

「契約を締結しないのはよくないと聞いた。相手からひな形が提示されたので、その内容で締結すればよいのか?」

「相手はみんな同じ内容で契約してもらっているといっている。修正できないのではないか?」

こんな疑問をお持ちの経営者の皆様も多いのではないでしょうか。

しかし、私たち弁護士は、相手方の契約書の雛型をそのまま受け入れてしまったがゆえに、大変な目にあった人を目にしています。

そもそも契約書のひな型は何のためにある?

そもそも、契約書のひな型というのは何のためにあるのでしょうか。

その目的は、大きく以下の2つと考えています。

  • 定型的な取引に簡易に対応する
  • 自社に有利な条件を先に決めておく

このうち、契約の相手方として特に気にすべきは、②自社に有利な条件を先に決められていることです。

どのような条項で相手に有利になるのか?

契約書のひな型で自社に有利な条件が決まっている、逆に言えば、取引先にとっては不利な条件となっている、といわれても、ピンとこないと思います。

以下では、具体的な条項例を考えてみましょう。いずれも、ひな形を準備している側が非常に有利になっています。

不良品の取り扱い

例えば、自分が買主になる商品の売買についての契約に、以下の条項があるとします。

「買主は、商品の受け取り後、3日以内に検査を行い、契約の内容に適合しないものがあるときは、直ちにその旨を売主に通知しなければならない。かかる通知がない場合、売主は契約不適合について何らの責任も負わない。」

これは、民法や商法の規定と比べると、買主に不利になっている部分があります。

買主・売主がどちらも会社である場合を想定すると、法律の規定と比べると以下のとおりです。

 

 

法律

この契約

検査

売買の目的物を受領後遅滞なく検査(商法526条1項)

商品の受け取り後、3日以内に検査

通知

・契約不適合を発見したら直ちに通知(商法526条2項)

・直ちに発見することができない契約不適合(目的物の種類又は品質に関するもの)については、6か月以内に発見したら直ちに通知(商法526条2項後段)

契約不適合を発見したら直ちに通知

契約不適合責任

6か月以内に発見した場合でも契約不適合責任を追及しうる

3日以内に検査をして見つけられなった契約不適合については責任を追及できない可能性がある

このように、法律に比べると買主にとって非常に不利になる可能性がある契約条項になっていることがわかります。

このような条件で契約してしまうと、問題のある商品のリスクを買主側で抱えてしまうことになりかねず、会社に大損害を与えてしまう可能性があります。

損害賠償の上限

自分が買主になる商品の売買についての契約に、以下の条項があるとします。

「本契約に基づき売主が買主に対して損害の賠償をする場合、損害賠償の額は商品の売買代金総額を上限とする。」

これも、民法の規定と比べると、買主に不利になっています。

民法であれば相当因果関係のある範囲内の損害であれば特に上限なく損害賠償の対象となりますが、この契約条項では「商品の売買代金総額」が上限とされてしまっています。

差し迫った受注があり、それに対応するために売主にもその旨伝えて部品を仕入れようとした場合に、実際に部品が納品されず取引先に納入ができなかったような場合を考えてみましょう。この条項がなければ、相当因果関係の範囲内の損害であれば請求できた可能性があるのに、この条項のせいで部品の代金総額が上限になってしまうのです。

知的財産権

例えば、自分が受注者となり、発注者が希望する目的物を納入する契約に、以下の条項があるとします。

「受注者は、目的物において第三者が有する知的財産権を侵害しないことを保証する。目的物において第三者が有する知的財産権を侵害する場合には、受注者が一切の責任を負う。」

このような条項があると、受注者は、発注者の希望する内容の目的物を作ったにもかかわらず、知的財産権の侵害について一切の責任を負わされることになってしまいます。知的財産権の侵害は、会社にとって非常に大きな損害をもたらす可能性がありますので、非常に危険な条項です。

なお、このような条項は、中小企業庁の定める知的財産取引に関するガイドラインでも問題視されていますので、重要な交渉ポイントです。

定型の契約書だから修正はできないといわれたら?

契約交渉でよくあるのが、「定型のひな型なので修正はできない」という対応をされることです。

たしかに、ひな形は定型的な取引を簡易迅速に行うという目的があり、契約条件の一括した管理も可能になるため、個別の条件交渉に応じるというのは、ひな形を用意している目的の一つを失わせかねないことになります。そのため、ひな形を用意している側からすると、修正は受け入れたくないものです。

しかし、粘り強く交渉をすれば、ひな形を修正してもらえたり、別で合意書を作成したりして、個別の条件を引き出すことができる場合もあります。

また、どうしてもひな形を修正してくれないという場合には、ひな形のリスクを洗い出したうえで、それでも取引を行うかという経営者としての判断をする必要があります。

契約書のリスクを考えないままに契約を締結するというのはもちろん問題ですが、逆にこちらの要望が受け入れられないからと言って契約や取引をしないというのもビジネスチャンスを逃してしまうのでもったいないことです。

個別の契約書について、会社にとってのリスクはどのようなものなのかをしっかりと把握したうえで、契約するかしないかの判断をしなければなりません。

弁護士に契約書のチェックを依頼することのメリット

相手から提示されたひな形をそのまま受け入れてしまうことの危険性はわかりましたでしょうか。

とはいえ、危険性はわかっても、どのようにチェックしてリスクを分析したらよいかは分からないこともあると思います。

契約条項は複雑になっていることが多く、全体を通じた確認が必要になるので、リスクの分析は高度の専門性が必要になります。

これを社内で行おうとすると専門的な知見のある人材の確保・教育も必要になり、かえってコストがかかることも多いです。

この点、自社で抱え込むのではなく弁護士に依頼することで、適切なリソースの配分・業務の効率化が可能になります。

法律事務所Zでは、日常的に企業の契約書レビューを行ってきた弁護士が複数在籍しており、これまでの経験を踏まえて、迅速かつ適切なチェックを行うことが可能です。また、どのポイントを特に重視すべきかという観点からのアドバイスも行っております。

相手から提示されたひな形への対応にお困りであれば、ぜひ一度、法律事務所Zにお問い合わせください。

この記事の執筆者:坂下雄思

アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所後、野村綜合法律事務所への移籍、UCLA LLM修了、ニューヨーク州司法試験合格を経て、法律事務所Zに参画。同時に、自身の地元である金沢オフィスの所長に就任。労働事件では企業側を担当。

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