
日本企業が海外進出する際の留意点は?企業法務に精通した弁護士が解説
- 英文契約・国際法務
10:00〜18:00 土日祝を除く
目次
こんにちは。法律事務所Zの弁護士の坂下雄思です。
今回のテーマは「Distribution Agreement(販売店契約)」についてのお話です。
「当社に商品を海外展開するにあたり、現地で販売代理店を起用することを考えている。どのような契約書を準備すればよいのか?」
「海外の商品を日本で販売したいと考えている。相手から契約書が送られてきたが、このまま締結してしまっていいのか?」
海外は大きな市場であり、自社の製品を海外展開できるとなればこれまでにはなかった利益を生み出すことが可能になるかもしれません。
他方で、海外で販売できるルートがなければ現地での販売はできません。現地に自ら拠点を作って販売を行うのは、時間も労力もコストもかかり、なかなか現実的ではありません。そこで考えるのが、販売代理店の利用です。
販売代理店は、現地に拠点を有しており、現地の法規制に対応することも期待でき、また販路を既に確立していることが期待できるので、海外進出にあたってのビジネスパートナーとしてはもってこいの存在です。
しかし、例えば商品を送ったにもかかわらず代金が支払われない、他の競合品を扱っており自社の製品を販売してくれない、販売努力をしてくれないなど、様々な問題が生じる可能性もあります。特に、海外ですので、文化、考え方、背景事情等の違いから、期待したような動きをしてくれないこともあり得ます。
このような懸念に対応するためには、Distribution Agreement(販売店契約)においてしっかりと取り決めをしておくことが有益です。
この記事では、Distribution Agreement(販売店契約)のポイントについて解説していきます。なお、英文契約一般に共通する準拠法や紛争解決手段については、こちらの記事(https://kanazawa.corporate.z-law.jp/business/international-law/)をご参照ください。
例えば、以下のような事例を考えてみましょう。
当社は、食品を取り扱う会社です。 先日、当社が取り扱っている商品について、海外のお客様から取引をしたいという旨の連絡がありました。日本食ブームのようです。 取引に関して、どのような内容の契約を締結すればよいのでしょうか?また、新たな取引先なのですが、気を付けるべき点はありますか? |
まず、販売代理店に対して、どのような商品を取り扱わせるかというところを確定する必要があります。
そのため、対象商品を契約書に明記する必要があります。この際、例えばシリーズの商品も含めるか等が議論されることもあります。
食品であれば、例えばスナック菓子を想定すると、風味の異なる商品が複数あることもあり、海外で展開する風味を限定するのであれば、そこまで特定したうえで契約書に明記しておかなければなりません。
販売代理店を選定する場合は、どの地域で活動するかということについて取り決めをしておく必要があります。その販売代理店が得意としている地域でのみ代理権を与えて、他の地域では他の経験豊富な販売代理店を選ぶことが考えられるからです。
そして、この地域と関連して、販売代理店に独占権を与えるかということが非常に重要な問題になります。
例えば、販売代理店に対して、当該地域における独占的な販売権を付与したとします。そうすると、会社は、他の販売代理店を起用することはできなくなります。また、会社が自ら販売できるかという点についても疑義が生じることになります(独占的な販売権ということについて、自らが販売しないことまで含まれるかという議論になります。)。
独占権を与えるか否かという点は、その他の条項にも影響が出てきますので、ビジネス交渉の段階から議論していくことが重要です。
販売代理店に自社の製品の販売に注力してもらうために、競合品の取扱いを禁止することがあります。
このような制約は、販売代理店のビジネス展開を阻害することにもなり得ますので、販売代理店から反発がある可能性もあります。
競合品の取扱いを禁止する条項を盛り込む場合には、どのような製品の販売が禁止されるのか(競合品の範囲)について、予測可能性の観点からもなるべく詳細に取り決めを行っておく必要があります。
海外との取引を行うにあたっては、支払条件は非常に重要です。
例えば、全額後払いにしたような場合には、商品を納入したにもかかわらず不払いになるリスクを納入した側が負うことになりますので、商品を納入する側としては前払いを希望することになります(逆に、海外の商品を日本で販売する際の販売店となる契約であれば、後払いの方が有利になります。)。なお、支払い手段としては電信送金が一般的な印象です。
また、隔地者間での代金支払いを確保する手段として、信用状(Letter of Credit)を利用した取引が考えられます。取引の規模や頻度によって利用するに見合う手段かという判断はあると思われますが、検討に値するものと思われます。
日本には日本の法律があるように、外国では外国の法律があり、そこで商品を販売する以上、現地の法律を遵守しなければなりません。
もちろん、海外での展開を狙う以上、現地の法律についてはある程度調査を行い、どのような規制があるかは把握しておくべきですが、現地の法律について十分な理解をするのは必ずしも容易ではなく、現地の弁護士を起用して法令遵守についてのアドバイスをくまなく受けるというのも必ずしも現実的ではないでしょう。
そのような場合には、販売代理店に法令遵守や許認可対応の義務を負わせ、販売代理店に適切に対応させるということが考えられます。
冒頭の事例でも、食品を海外で販売するにあたって現地の法規制としてどのようなものがあるか、許認可等は必要にならないかという点については、確認が必要になるでしょう。
何らかの理由で販売代理店を変更したい、あるいは自社で販売を行いたいと考えることもあるでしょう。
そのような場合に備えて、契約終了についての条項を設けておくことは非常に重要です。
そして、現地の法制度により販売代理店が保護されてしまわないか(つまり、Distribution Agreementを解除できないことにならないか)ということについても可能な限り調査を行うことが望ましいといえます。
Distribution Agreement(販売店契約)は会社にとって非常に重要な契約ですが、考慮要素が多く、ビジネス的な観点からの検討も必要になるため、慎重な検討が必要になります。
このような内容の英文契約を社内だけで完結しようとする場合、リスクの見落としが生じる可能性もあります。
Distribution Agreement(販売店契約)に慣れた弁護士であれば、どのようなポイントが重要を理解しており、またどのような取引かという点についても理解が早いと考えられますので、的確なアドバイスを迅速に受けることが可能になるでしょう。
法律事務所Zでは、留学経験のある弁護士やDistribution Agreement(販売店契約)を含む英文契約のチェックを豊富に行ってきた弁護士がアドバイスを行うことが可能です。
Distribution Agreement(販売店契約)対応にお困りであれば、ぜひ一度、法律事務所Zにお問い合わせください。
![]() | この記事の執筆者:坂下雄思 アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所後、野村綜合法律事務所への移籍、UCLA LLM修了、ニューヨーク州司法試験合格を経て、法律事務所Zに参画。同時に、自身の地元である金沢オフィスの所長に就任。労働事件では企業側を担当。 |
広告責任者: 弁護士法人Z(第一東京弁護士会)
Copyright© 法律事務所Z 金沢オフィス. All Rights Reserved.