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協調性のない社員は解雇できますか?~弁護士がモンスター社員の対応と注意点を解説~

組織には様々な特性をもった従業員がいます。どんな組織においても成果を出し続ける優秀な人材だけを集めるというのは難しく、一流企業であっても求められるレベルに対して、成果を出せない社員や問題がある社員は一定数いるものです。今回は、問題がある社員の中でも、「協調性がない」社員への対応や解雇できるかについて、弁護士の視点で注意すべきポイントを解説します。

協調性とは?

人材採用時の求められる人物像として「コミュニケーション能力が高い人」と並んで挙げられることが多い条件に「協調性がある人」があります。それだけ組織で働くことにおいて必要な資質ということですが、そもそも協調性とは何を指すのでしょうか。

協調性とは、自分とは立場や能力、価値観、考えの異なる相手と協力しながら行動できる能力をいいます。複数人で業務に取り組んだり、チームで目標達成に向けて行動する状況において極めて重要な能力であるため、採用において重視されるのです。

協調性がない社員の特徴

協調性があるかについては、次の項目が該当するかどうかである程度判断できます。

①相手の立場や気持ち、考え方を尊重することができない

②他者の意見やアイデアを聞き、理解する能力がない

③自分と異なる意見を持つ人の話にも耳を傾け、最後まで話を聞くことができない

④自分以外の周囲の状況を観察することができない

⑤周囲の人が困っている時に、手助けができない

もちろんこれらの項目だけで断定できるものではないですが、複数該当してしまう場合、協調性がないと言える要素が多いと言えます。

その他の問題社員対応についてはこちら

協調性がない社員を放置するリスク

協調性がない社員に対して対応せずに放置してしまった場合、どのようなリスクがあるでしょうか。

部署、組織として生産性が低下する

協調性のある社員だけの組織と比較すると、協調性がない社員がいる組織では、生産性が低くなるという傾向があります。そのため、改善しない状態が続けば部署や組織の生産性に悪影響があります。

周囲の社員への負担が増える

協調性のない社員の業務や成果が不足している場合、協調性のない社員に代わって上司や周囲の同僚が補うということが往々にして起こり得ます。その場合、当然ながらサポートする側の社員の負担が増えることになります。協調性のない社員の業務を周囲の社員が補填する状態を放置してしまうと、周囲の社員の不満が溜まっていき、最悪の場合協調性のある優秀な社員が離職してしまうという結果に至ることもあります。

協調性のない社員を解雇する際の注意点

協調性のない社員への教育やマネジメントについては、本記事の趣旨ではないため言及しませんが、改善策を講じた結果として解雇するという判断に至った場合の注意点について、弁護士の立場から解説いたします。

前提として日本の労働法では、会社が自由に労働者を解雇することは認められておりません。労働契約法の第16条において、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合における解雇は、無効と定められています。

これに対し、従業員と合意のもとで雇用契約を終了することを「合意退職」と言い、退職に向けて従業員を説得する「退職勧奨」が行われます。従業員を退職させるという意味で、会社側の目的は同じですが、無効な解雇と主張されないように、まずは合意退職を目指して適法な退職勧奨という形を取るのが良いでしょう。

退職勧奨のリスクと進め方

退職勧奨を進める際に適切な方法で行わないと、「退職強要」に該当するので退職は無効であるとして社員から訴えられてしまうこともあります。そうならないために、以下のポイントを意識すると良いです。

回数は少なく面談時間は短く

一般的に退職勧奨は個別面談で行いますが、何度も繰り返し実施したり、長時間にわたって会議室に拘束してしまったりすると、「強要」と捉えられかねません。予め伝える事項や条件などは整理しておき、短い時間で終えることを心がけましょう。

人数は少なく最小限で

問題社員ひとりに対し、会社側が複数名という構図になってしまうと、心理的圧迫感が強くなってしまいます。かといって、1対1も不透明性がありフェアな面談にならないことが懸念されますので、会社側は直属の上司と人事部門の管理職など、最少人数で実施するのが良いです。

退職を強要するような発言は控える

社員自らが退職するという決断をすることを促すことが退職勧奨ですので、「会社を辞めろ」、「退職しろ」、「解雇する」といった発言はNGです。加えて「退職しなければ減給する」、「退職しなければ降格する」といったように、社員本人が不利益となる条件を提示することも退職強要と捉えられる可能性があるため注意が必要です。

議事録や録音して面談内容を記録する

面談は最少人数で参加した上で議事録を残したり、場合によっては録音するなどして退職勧奨として適切な面談であるという証拠を残しておくと良いです。

逆に、社員も面談の内容を録音しているでしょうから、不用意な発言を控えることがとても重要になります。

協調性のない社員の解雇は弁護士に相談を

退職勧奨がスムーズに進まなかった場合、協調性がないというだけで解雇するのは、解雇要件として成立させることが難しいのが現実です。実際には、退職勧奨に至る前に適切なマネジメントを実施し、社員教育やスキルアップの支援、配置転換などによる充分な改善措置を講じたかなども重要になります。

解雇や退職が無効になってしまうと、解雇・退職としていた時期からこれまでの賃金・賞与を請求されることになり、裁判が長引き1~2年とかかると、1000万円以上の金銭を支払わなければならないということにもなりかねません。

また今の時代、問題社員への対応を間違えてしまうと、ネットやSNSなどで会社に対するネガティブな情報を発信されてしまい、それが事実無根であったとしてもネット上で拡散し、デジタルタトゥーとして会社にさらなる不利益をもたらすということも考えられます。

後々にトラブルに発展しないよう、協調性のない社員の対応は早期に弁護士に相談した上で、適切な対策を実施することが求められます。

法律事務所Zには、四大法律事務所出身の企業法務専門弁護士や企業内弁護士の経験者が多数在籍しておりますので、協調性のない社員をはじめとする問題社員の対応についてもお気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者:坂下雄思

アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所後、野村綜合法律事務所への移籍、UCLA LLM修了、ニューヨーク州司法試験合格を経て、法律事務所Zに参画。同時に、自身の地元である金沢オフィスの所長に就任。労働事件では企業側を担当。

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