こんにちは。法律事務所Zの弁護士の坂下雄思です。
今回のテーマは、「中小企業が最低限整えるべき法務チェックリスト」です。
中小企業の法務トラブルの多くは、「予防できたはずの問題」です。
契約書の不備、従業員との認識のズレ、売掛金の回収遅れ──。
こうしたトラブルは、実は“起きてから”弁護士に相談すると、時間・コスト・社内負担が一気に膨らむ傾向があります。
しかし、裏を返せば、最低限の法務体制を整えておくだけで、多くのトラブルを回避できるということでもあります。
「何から手をつければよいかわからない」
「うちは小規模だから本格的な体制は難しい」
そんな企業のために、この記事では“まず整えておくべき最低限の法務チェック項目”をわかりやすく整理しました。
自社に当てはめて、ぜひ今日から見直しのきっかけにしてください。
契約書まわりのチェック
□ 契約書の有無・最新版の管理はできているか
- 重要取引を口頭・メールだけで済ませていないか
- 相手企業のテンプレートを“そのまま”使っていないか
- 契約書の最新版がどこに保存されているかわかるか
契約書はトラブル時の「よりどころ」です。自社の取引について、契約書は締結しているか、また、最新版の契約書はどれかを管理することは、「よりどころ」の情報を把握することに他ならないので、非常に重要です。
自社ひな形を整備し、運用ルールを決めるだけでもリスクは大きく下がります。
□ 重要条項(責任範囲、解除、損害賠償)が明確か
損害賠償の範囲、契約解除の条件、契約不適合などの条文が曖昧だと、後々、契約の解釈をめぐって争いになります。明確かつ自社に有利な文言となるようにしておく必要があります。
労務・人事トラブルを避けるためのチェック
□ 労働契約・就業規則・労使協定が最新法令に対応しているか
- 労働契約締結時の労働条件の明示
- 時間外労働(36協定)
- 育児・介護休業法
法改正に対応できていないと、会社にとって不利な判断がなされることがあります。また、従業員の就業意欲にも直結するので、リテンションにも関係します。
□ ハラスメント対策は形式だけでなく運用されているか
相談窓口、事実確認の手順、記録方法など、トラブル発生時に適切に対応できているでしょうか。トラブル発生後、最も問題になるのは、「対応の不備」です。ポイントを押さえた運用がなければ、有利な証拠が残らないことになり、後々会社にとって不利に働きます。
□ 解雇・懲戒のルールを社内で共通認識化しているか
就業規則・証拠化・手続の流れを押さえていない解雇は紛争化するリスクが高くなります。こちらも、ポイントを押さえた運用がなければ、有利な証拠が残らず、後々会社にとって不利に働きます。
債権回収・取引先トラブルのチェック
□ 与信管理をしているか(新規取引の調査)
取引先の信用情報を調べず契約すると、未払いのリスクが跳ね上がります。
□ 売掛金の管理フローはあるか
- 入金遅延が起きたときの対応期限
- 督促文のひな形
- 担当者ごとの対応権限
初動が遅れるほど、回収率は下がります。
□ 大口取引に担保・保証を検討しているか
担保や連帯保証は、未払いリスクを大幅に減らす実務的な手段です。
情報管理・コンプライアンスのチェック
□ 個人情報保護の体制が最新版か
プライバシーポリシー、委託先管理の条項等、特に変化の激しい分野ですので、古い情報のままでは法令違反になる可能性があります。
□ NDA(秘密保持契約)をきちんと運用しているか
NDAを締結するだけでなく、「どこまでを秘密情報とするのか」、「情報共有が許される範囲はどこまでか」、「契約期間はどうするのか」等を明確にしておく必要があります。
□ 社内にコンプライアンス違反を報告する仕組みがあるか
内部通報制度は、企業規模問わず、導入しておくとリスク低減になります(常時使用労働者数300人超の事業者は設置義務を負います。)。
株主・経営管理のチェック
□ 定款・株主名簿・登記が実態と一致しているか
放置されたままの株主や、名義だけの役員がいると、後の紛争の火種になります。定款変更を行っているものの最新の定款が分からないと、手続をどのように進めてよいか分からない場合があります。
□ 重要な決議は正式な議事録を作っているか
株主総会は年に1度の開催が必要になります。また、取締役会も含めて、議事録を正しく作っておく必要があります。
□ 資金調達や事業承継の際に必要書類を整備しているか
株主名簿、議事録は後から整えると不整合が生じやすい部分です。また、株主が分散していると事業承継の際に株式を集約するのに手間がかかるので、株主を整理しておくことも重要です。
緊急時に備えた体制整備
□ 有事の初動対応マニュアルがあるか
- クレーム
- 情報漏洩
- トラブル発生時の記録方法
- 弁護士への連絡ルート
この初動対応が、後々の紛争の拡大防止に大きく影響します。
法務体制の構築のサポート
法務体制は“大掛かりな仕組み”である必要はありません。今回のような最低限のチェック項目が整っているだけで、多くのトラブルは防ぐことができます。
法律事務所Zでは、会社関係の案件を数多く取り扱ってきた実績のある弁護士が複数在籍しており、これまでの経験を踏まえて、迅速かつ適切なアドバイスを行うことが可能です。
- 契約書のひな形作成
- 就業規則・社内規程の見直し
- 売掛金・取引リスクの事前診断
- 緊急時の対応フロー整備
- 顧問契約による継続サポート
について、御社の状況に合わせて、“今すぐ着手すべきポイント”について30分無料でお話しさせていただきます。
「うちの会社はどこが弱いのか?」と思われた経営者の方は、ぜひ一度法律事務所Zにご相談ください。
 | この記事の執筆者:坂下雄思 アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所後、野村綜合法律事務所への移籍、UCLA LLM修了、ニューヨーク州司法試験合格を経て、法律事務所Zに参画。同時に、自身の地元である金沢オフィスの所長に就任。労働事件では企業側を担当。 |